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池之小町の最近の俳句

  🌖 南風誌 ・ 雪月集掲載  🌠

 
 🦋拙い俳句ばかりですがご覧ください🦋 
 
各号の2ヶ月前に投句するので (毎月の締め切りは5日)
例えば 4月号は、ほぼ1月か2月に作った句になります
 
2024(令和6年)
 
4月号  「近 火」
 
  近火見に顔をまつ赤にして走る
 
  低い木だつたのね落葉し尽して
 
  大寒のポストは手紙待つてをり
 
  瞳ひかるマスクに帽子近よりて
 
  うすらひの下まるまると真鯉ゆく
 


 
3月号  「馬籠の宿」
 
  正座して聴く炉語りや馬籠更く
 
  冬あたたか張り子のが首振りて
 
 歌留多取りむすめふさほせ狙いけり
 
  前世あらば深き縁の年酒酌む
 
  法善寺横丁河豚の目ギョロリ
 


2月号  「冬に入る」
 
  冬ぬくし生家の食器いまも使ふ
 
  をとこ色をんな色干す蒲団かな
 
  神集ひ人もつどひて吹くぜんざい
 
 おもちや箱に残り毛糸の玉いろいろ
 
  飛び石をびくびく渡る川小春
 


 
1月号  「大砂走り」
 
  秋晴や踏みしむ富士の砂走り
 
  新とうふ乾く間なしの手にお代
 
  の日や九九算いまも淀みなく
 
  秋澄むや升かけすぢの奈良大仏
 
  山霧や方位失ひ声うしなひ
 


   

 

令和5年 南風10 月号に掲載

 

 特別作品 『葛の花』

 
般若面外して汗と涙拭く
 
地謡に座してふくらむ夏袴
 
黙念と着す装束秋に入る
 
光る君とちぎりし秋の蛍かな
 
名鐘の聲や月下にカケリ舞ふ
 
井の水に映すおもかげ花すすき
 
秋扇や江口うたひて弔らはん
 
持ちかぬる恋の重荷や葛の花
 

 
 
 いよいよ夫は能楽師として約70年間の務めを終える時が来た。定年はないので、体力気力が続くかぎりできる仕事ながら、限界を悟って自ら幕を引かねばならない。私もその付人として、二人三脚で頑張って来た。芸道に精進することが第一で、平穏な生活は望めないとの覚悟で今日まで来た。
 コロナ禍が長引いたことで、活動が制限され、想像以上の打撃をうけたことも個人的な状況と相まって、その時期を早めたように思う。
 しかし、明治維新までは大名の庇護のもと恩恵をうけて来た能楽師が失業の憂き目に遭い、世界大戦中はもとより戦後も甚大な危機に瀕した能を復興された先達のご苦労に思いを馳せれば、私ごときは苦労の内に入らないのは言うまでもない。
 年がら年中、旅暮しのような日常に終止符を打ち、今は謡の教室のみに専念している。これも年相応だと有り難い。